子ども万華鏡大賞審査講評
-子どもの興味と工夫がつくりだす新しい万華鏡世界-

審査委員長 京都教育大学美術科教育教授

村田利裕

1.ねらいと実施方法

子ども万華鏡大賞は、子どものための万華鏡コンクールです。万華鏡にふれ制作する事を通して生活の中で自由に、想像の赴くままに万華鏡を制作する事で子ども達の心がより豊かに、より健やかに成長できることを希望して、「子ども万華鏡大賞公募展」は実施されています。コンクールですが、全ての応募作品が展示される展覧会です。

2.主催および共催

主催は、特定非営利活動法人京都万華鏡こう房・京都万華鏡ミュージアムであり、共催は、京都市教育委員会です。

3.応募条件

(1) 応募条件は、次の通りです。

① 未発表の完成した作品に限ります。出品点数等 一人2点まで

② 応募資格 3才以上の幼児・小学生・中学生

③ 応募作品は、高さ35㎝ 幅35㎝ 奥行35㎝以内の箱に入れて送付可能な作品

④ 工夫した点等を記載したエントリーシートの提出

 なお、詳細は「第 10回子ども万華鏡大賞公募展」実施要項を参照下さい。

(2)受賞区分

 幼児の部、小学生低学年の部、小学生高学年の部、中学生の部の4区分です。子ども万華鏡大賞・京都市教育長賞・京都万華鏡ミュージアム賞の3賞を基本とし、応募実態に対応して、審査員特別賞を設定しています。

4.募集期間 および 審査日、展覧会開催期間

(1)募集期間

第 10回子ども万華鏡大賞の募集期間は、2022年7月20日(水)~2022年9月19日(月)まででした。

(2)審査日

 審査日は、2022年10月7日(金)13:00~でした。審査会開催場所は、京都市教育相談総合センターこどもパトナ(〒604―8184 京都市中京区姉小路通東洞院東入曇華院前町706―3)でした。

(3)展覧会開催期間

展覧会の開催期間は、2022年11月1日(火)~11月6日(日)午前10時~午後6時(最終入館 午後5時30分) (※開館時間は変更になる場合があります。)展示場所 は、京都万華鏡ミュージアム 姉小路館アートギャラリーです。(※本公募展については入場無料。ただし、常設の万華鏡展示ルームは有料。)

(4)授賞式

 2022年10月30日(日)を予定していましたが、新型コロナウイルス感染症拡大防止のためオンラインでの受賞者発表となりました。

5.審査方法

審査は、審査の妥当性を高めるために、大きく4つの立場から選ばれた審査員で構成しています。美術教育研究者、万華鏡作家、教育関係・教育現場、主催ミュージアムです。

  • 村田利裕 京都教育大学美術教育学教授
  • 万華鏡作家 2名
  • 京都市教育委員会 2名
  • 京都万華鏡ミュージアム 2名

審査方法ですが、まず審査員各員で応募作品を1点ずつ十分な鑑賞を行い、3賞選抜を目的として投票しました。次に、その得票結果を視野に入れながら、各部門毎に1点ずつ妥当性を再検証し各賞を決定していきました。審査委員会全員による合議・合意による審査結果としています。

6.応募実態

表1が、部門別、県別の応募者一覧表で、表2は、部門別、県別の応募作品数一覧表です。昨年が55人であり、約1.45倍という増加傾向でした。また、積極的な2点応募がありました。立体作品は、平面作品と比較すると格段に送付等で積極的なご応募が必要となります。応募いただいた皆様に、心より御礼申しあげます。

表3が、部門別の受賞者数です。複数の受賞となっているところは、できるだけ絞ろうとは致しましたが、同一レベルという判断が妥当と判定されたとご理解いただければ幸いです。また、賞とはなりませんでしたが、優れた取り組みがみられる作品がございました。その状況を応募者の方にお伝えするために佳作と称して、お伝えすることとしました。今後一層の取り組みをしていただければと存じます。

各部門の大賞の動向から、本年度の傾向性にふれていくと、

幼児部門の大賞の「夏の思い出」に見られるように、自分の思いや考えをしっかり作り込んだ作品が見られました。粘土1つ1つをしっかり押さえ、見る側に創作意図が明確に伝わってくる優れた取り組みでした。

小学生低学年部門の大賞の「海の中をのぞいてみよう!」は、のぞき込むことすら必要としない、先端のホイールを回すだけで人々を万華鏡に軽々と引き込む仕組みに取り組んでいただきました。今回の傾向性としては、これまでよりも光の入り方に厳密に取り組んだり、かなり高度な仕組みに取り組まれた作品がありました。

小学生高学年部門の大賞の「恐竜時代の大噴火」は、セルタイプの万華鏡で、地中のマグマを見るような経験ができる万華鏡づくりに成功した作品例です。オブジェクトの選定やオブジェクトケースへの光の入り方など様々な工夫が見事に結実した作品となっていました。また、応募作品の中には、ミラーの作り方の精度を上げて、極限までに美しい映像を見ることができる作品もありました。個性表現の別のあり方を見るようでした。

第10回は、子ども達の新鮮なチャレンジとその数の多さに圧倒される実情でした。展覧会開催時に是非手に取ってご覧いただければと存じます。また、1つ1つの作品については、作品毎に講評を準備しました。ホームページで公開する予定です。そちらもご覧いただければ幸いです。

 

表1 部門別、県別の応募者一覧表

部門ごとの応募者数と作品数幼児部門小学生
低学年部門
小学生
高学年部門
中学生部門県(府)合計
応募者数8192457108
応募作品数9222559115

表2 部門別、県別の応募作品数一覧表

県(府)名幼児部門小学生
低学年部門
小学生
高学年部門
中学生部門合計
京都府712195795
大阪府13004
奈良県1001
東京都01001
千葉県01203
福岡県01203
佐賀県00101
合計8192457108

表3 部門別の受賞者数

賞名幼児部門小学生
低学年部門
小学生
高学年部門
中学生部門賞合計
子ども万華鏡大賞11114
京都市教育長賞11125
京都万華鏡ミュージアム賞31329
審査員特別賞363618
佳作1331017
各受賞作品数合計912112153

賞名幼児部門小学生
低学年部門
小学生
高学年部門
中学生部門賞合計
佳作147104 ※②
賞なし027195 ※③
応募作品総数714223881 ※①+②+③の合計

最後になりましたが、特定非営利活動法人京都万華鏡こう房・京都万華鏡ミュージアムのご担当様には、多大なお世話をいただきました。この場をかりて心より感謝申しあげます。

 

 文責 審査委員長 京都教育大学美術科教育教授 村田利裕

  • 村田 利裕/新関 伸也【編著】『やわらかな感性を育む図画工作科教育の指導と学び ―アートの体験による子どもの感性の成長・発達-』、ミネルヴァ書房
  • 監修:竹内 博/著者:中野隆二、村田利裕『造形コース』、日本色研事業株式会社
  • 竹内博 , 春日明夫, 長町充家, 村田利裕【編著】『アート教育を学ぶ人のために』、世界思想社  

  など多数

主催:京都万華鏡ミュージアム