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作品「はすのせかい」を子ども万華鏡大賞としました。水にのりを加えた液体をオブジェクトケースに入れており、水面を感じさせる挙動や揺らぎが演出される驚きの作品です。折り紙で蓮を丁寧に作り込み、その世界と予感させますが、覗いた世界は、この作品でしか体験できないウォーターワールドなのです。
筒の中に、青い6つの小さな腕が出ている雪の結晶オブジェクトを入れて、絞り込まれたオブジェクトだからこそ作り出せる、精神性の高い飾り気のない世界が提示されます。このオブジェクトは、筒にも貼られています。これらが、水の揺らぎ世界とともに味わえるのです。作品からは高い文化性や東洋の宗教観ともいえる世界観が感じられます。西洋では、ステンドグラスが文化的な宗教性を感じられる表現として用いられますが、東洋では、格子や障子からの光しか無かったように思われます。万華鏡が、高い精神性に接近できる装置であることを作品「はすのせかい」は、われわれに教えてくれていると考えられます。身近に蓮の池があるのでしょうか。どんなところに動機があったのかお尋ねしたくなります。他にないすぐれた芸術性と高い体験提示性がある作品ととらえ、子ども万華鏡大賞としました。
作品「キラキラ フラワー」を京都市教育長賞としました。この作品は、ホイールタイプの万華鏡です。筒の先に車輪のような円盤を取り付け、円盤に表現をして回す事でできる映像を楽しむ万華鏡です。この作品では、大きくは2枚の回転盤を自作しています。また、大きい方の円盤は、2枚が一枚に重なっている作りです。小さい方は黄色と赤色で2分されています。また、大きな方の円盤は透明で、丸いポケットのような小部屋が沢山あります。そこにオブジェクトを入れて、動きも出せるように工夫されているのです。小さな方の円盤には、小さくてカラフルな球体が沢山貼り付けられています。一方的に見せられてしまう万華鏡ではなく、回しながら次はどうだろうと、見る人の選択意欲を誘ってくれる万華鏡です。色や形のコミュニケーションが豊かに成立する工夫を多く盛り込んだ万華鏡を高く評価して京都市教育長賞としました。
作品「海の中の世界」を京都万華鏡ミュージアム賞としました。海辺にいると「ザーザー」と波音がしていますが、この作品は、回すと「ザーザー」と波音がでて、海の光映像が目の前に展開される万華鏡です。音を出すために小豆が入っているそうです。演劇の舞台が、手の中に収まったような驚きの万華鏡なのです。筒は、薄い青色と緑色のマーブリングを施して、両端には、ビーズでしょうか。薄い空色や透明の球状のオブジェクトで表現されています。遠浅の砂浜のような波音と、外観は細かに光り輝く小波達のような印象を受けます。覗いてみると「ザーザー」という音とともに変化する紺色を基調とした、濃厚な水の粒立ちを感じさせる世界が展開されます。光と音の融合。ライブな印象の強いこの新機軸を高く評価して京都万華鏡ミュージアム賞としました。
作品「百人一首のおひめさま」を審査員特別賞としました。この作品は、金色の扇子を持ち、黒を基調色とした豪華な和服を着た人の万華鏡です。ワンドタイプ(wand、試験管のような棒状のオブジェクトケース)の万華鏡で、オブジェクトが下降する姿が、光映像となります。お姫様の着物の柄である花や葉の赤色模様が、筒内の主調色となり、伝統的で豪華な色の世界が展開されます。和柄の端切れもオブジェクトとして筒内に入れています。大規模でなめらかな光世界は、オーケストラのような壮大な美しさを感じさせます。和の完成度を高く評価して審査員特別賞としました。
作品「おいしいまんげきょう」を審査員特別賞としました。とても美味しそうな万華鏡です。美味しく見せるために粘土でクリームを絞り、チョコドリンクは、茶色の材料(リボンや紐)で表現しています。緑色のキラキラ紙に、にっこりとした笑顔の子どもの顔が描かれています。私はこれを飲んでこんなに美味しい顔になりましたという表現でしょうか。最上位に刺さっている赤色と黄色のストローを抜くと万華鏡を見ることができます。筒内の光表現では、柑橘類を感じさせるオレンジ色や濃いめの緑色の世界が展開して、味覚を感じさせます。遊び心いっぱいなところと、こんな風に作りたいという思いに即して、万華鏡を一生懸命に作り上げる力がとても秀でていたので審査員特別賞としました。
作品「恐竜の世界」を審査員特別賞としました。この作品は、恐竜の世界を表した万華鏡です。青色の恐竜(ブラキオサウルス)は、高い木の葉を食べています。赤い目がある緑色の頭部の恐竜は、ティラノサウルスだそうです。この恐竜は、黒い胴体に金色のモールの毛が生えていて、真っ赤なお尻をしています。卵の近くにいます。小ぶりなネズミのような動物は、最初の哺乳類メガゾストロドンだそうです。筒の先も紙粘土をベースにおはじきやビーズで特別感が演出されています。中を覗くと、黒色と白色のモノトーンの中に、赤色や空色などカラフルな色が混ざり、ゆったりと形を変えていきます。恐竜の色を工夫し万華鏡の構成を自分で組み立てたところや、自分で太古の光表現を考えてつくりあげた点などが優れており、審査員特別賞としました。
作品「よぞらに見えるほし」を審査員特別賞としました。夜空と言っても真っ暗な夜空ではありません。万華鏡の筒に細かで微妙な凹凸をつけて、そこにうっすらと色をつけた明るい感じの表現なのです。色の感じよりも、立体的な凹凸が、宇宙の本当の姿のようにも受け取れます。この微妙な世界を背景に、明快な色のオブジェクトが直線的に並んで表現されています。星々の並びが意識された表現なのでしょうか。この作品の夜空は、独特の謎が潜んでいるところに魅力があります。
中を覗くと、液体の入っているオブジェクトケースなので、透明感のある深い青色や緑色、一層薄い色達の世界がゆったりと変わっていってくれます。見かけの風景の夜空ではなく、宇宙の本当の姿ともいえる万華鏡なのではないでしょうか。独創的な表現の取り組みを高く評価して審査員特別賞としました。
作品「いれかえ万華鏡」を審査員特別賞としました。簡単に入れ替えができるように、オブジェクトケースを3段にしているユニークな万華鏡です。1段づつ入れ変えて見ることもできますが、3段重ねで見ると、写真表現で背景がぼけていくようにした表現のように、薄らと重なる色表現がとても新鮮です。重なり方を工夫して鑑賞できる点も鑑賞者が関われる万華鏡となっています。中を覗いてみると、透明な積層のように見えていて、そこに焦点の合っている明快な部分が合成された光表現となります。我々は、どうしてもオブジェクトケースは、ひとつという常識にとらわれています。その考えから解き放たれるユニークな取り組みに注目して審査員特別賞としました。
作品「むげんにいれかえをできる ゆめのまんげきょう」を審査員特別賞としました。同じ形の5個のオブジェクトケースを持った、セル(チェンバー)タイプの万華鏡です。それぞれのケースに、赤色系統、黄色系統、緑色系統、青色系統のオブジェクトが入っています。この万華鏡には、特定の世界が楽しめるという発想ではなく、無限に入れ替えられると発想してみる面白さがあります。筒もカラフルな構成の、反射する紙を貼っています。色の純粋な組み合わせの遊びにとても刺激される万華鏡です。
内部を覗いてみると、何層もの半透明の枠に色世界が展開されます。自分でもオブジェクトを入れたくなる万華鏡です。試行的な取り組みを高く評価して審査員特別賞としました。
作品「水の中の万華鏡」を佳作としました。筒は、印象深い青色で塗られています。その色調は、フランスの芸術家 イヴ・クライン(Yves Klein)の青色の世界を彷彿とさせる深い青色の表現です。この作品の青い筒表現からは、「水の中には、同じ色に溶け込んでいるが、存在感たっぷりの何かがいるぞ」と言われているようです。
筒の中を見ると、自分で見つけた赤いガーネットが綺麗に発色し、山で見つけた黄鉄鉱の暗い黄色みや、ビーズの透明感のある空色が対比的な色味で引き立っています。色の優れた研究として高く評価して佳作としました。
作品「海の万華鏡」を佳作としました。外観からはオイルタイプのオブジェクトケースは隠れていますが、内部の光表現は、深海を思わせる深い青色や緑色や黄色や黒色などの世界がゆったりと変わっていきます。筒の表現としては最下部に、チンアナゴでしょうか。白色と黒色の逆L字のような可愛い姿が表現されています。高知以南など南方のサンゴ礁周辺の砂地などに棲んでいるそうです。オレンジ色のニシキアナゴもいます。また、この海には、黄金色のタツノオトシゴやイシダイでしょうか、ヒトデもいます。透明感いっぱいのビーズで足を作っているのは、クラゲでしょうか。中でも青色の並外れて大きな生き物もいます。ジンベイザメやエイなどの大型の生物かもしれません。海の様子を自分の解釈で存在感たっぷりに、独創的に表現していった点を高く評価し佳作としました。
作品「夏の夜空」を佳作としました。白いレース状の和紙を使って、天の川に見立てて、沢山の星が輝いているところをイメージしたそうです。具体的には、この天の川に星形や円形のオブジェクトを貼って表現しています。
内部を見るとワンドタイプの万華鏡で、棒状の容器(ワンド)の中のオブジェクトの下降によってできる光表現を楽しみます。黄金色の星形、大小様々なオブジェクトで、壮大な夏の夜空が演出されます。
主催:京都万華鏡ミュージアム