子ども万華鏡大賞

作品名:宝の山

【のぞく時の注意点】ガラス玉と見るところをぶつけない

【工夫した点】いらないCDに宝物をはって回すためのいらないペンを使った事

【この万華鏡の楽しみ方】ペンを回すと、CDがうごいてキレイに見えるので回して見る事

審査員講評

作品「宝の山」を子ども万華鏡大賞としました。しっかりした立体感にあふれる黒い直方体が目に飛び込みます。この直方体が、宝石たちでちりばめられているのです。海の波が産み出したかのような貝殻や、輝くばかりのボリューム感たっぷりのオブジェクトが、ほぼ全面にはりめぐらされています。中心には、七色に輝く回転盤(CDディスク利用)が配置されています。ディスクに貼られている約25個のオブジェクトは、ボリューム感のある素材が厳選されています。1つひとつが、彫刻の作品を見るような「くるんくるん」とした立体感を発信しているのです。一方、オブジェクトが貼られているだけではありません。切って作られたと思われる、月形や三角形や長方形の色の光沢紙とのアンサンブル(ensemble、組み合わせ、合奏・合唱団)なのです。円盤を回すと、鑑賞者は、形や色の指揮者です。これをテレイドスコープ(外観鏡。筒先にレンズを取り付け、外の景色の移り変わりを取り込む万華鏡)で見て楽しみます。われわれの身近には、宝石箱という言葉があります。凹凸からみると、閉じられた凹の中に、貴重な宝石を入れておきます。この作品では、凸の山に注目します。宝石達は、閉じ込められたところから解放され、こちらに訴えてくる形なのです。さらに、ひとつの空間だけでなく、テレイドスコープは、宝石達の形や色を無限の世界へ解放します。そこは、宇宙のようにどこまでも変化する豊かなイメージ世界、つまり本当の宝の山と出会える場所なのです。新しい世界へのチャレンジ精神と完成度の高い取り組みを高く評価して子ども万華鏡大賞としました。

京都市教育長賞

作品名:昆虫の森

【のぞく時の注意点】昆虫、虫がにがてなひとは、見ないでください。

【工夫した点】大きいペットボトルを使ったことです。ぼくが出会った昆虫・虫にした。見る所にフェルトをつけて長時間見れるようにした。

【この万華鏡の楽しみ方】いろいろ昆虫がいるのでいっぱいまわしてください!

審査員講評

作品「昆虫の森」を京都市教育長賞としました。馴染みの多いペットボトルが、昆虫の万華鏡へと変身した作品です。昆虫の姿が、ペットボトルの表面に描かれています。さらに、中心部分には、万華鏡の3面鏡が緑色の材料で貼り込まれ、木々の葉っぱのような、緑の森のイメージとなっています。この緑の3面鏡には、トンボやクワガタなどが、フェルトでしょうか、ソフトな質感の布で作られています。ペットボトルは、透明感が高く、少しくぼんでいく形状なので、もちやすそう!いい形、Good!と思わせます。

 しかし中を覗くと、外観のつくり以上に、本当に驚きの体験が生まれるのです。万華鏡の中に、リアリスティックな虫たちの世界が展開されているのです。角を丸くした透明な板の上に、かなり細いサイズの油性ペン(予想)で、虫たちを克明に描いていったのではないかと考えられます。細部に至るまで表現されたバッタやクワガタやカミキリ虫などが、万華鏡の光世界に生きているようです。黒色が基調色ですが、赤色や青色や緑色が、虫たちの体に塗られてもいます。森の中の昆虫世界をこれほど徹底して表現し、虫の生活をそのままに見るような体験のできる作品は、これまでなかったと考えます。万華鏡の中に描いたオブジェクトを入れる、もしくは丁寧に描いた感じのするオブジェクトをさがしてきて入れるなど、既存のオブジェクトをただ単に投入するだけの万華鏡とは完全に一線を画しているのです。興味・関心のある世界を他にない独自な方法をあみ出して実現に向かった点を高く評価し京都市教育長賞としました。

京都万華鏡
ミュージアム賞

作品名:空の中

【のぞく時の注意点】

【工夫した点】プラ板に絵を書いて、(写真を見ながら)焼いたところと、紙に絵を書いたところです。

【この万華鏡の楽しみ方】プラ板を回して見てください。空にいろんなものがうかんでいますよ。

審査員講評

作品「空の中」を京都万華鏡ミュージアム賞としました。飛行機に乗っている楽しい様子が万華鏡になった作品です。ペットボトルのドリンクを少し飲んで、椅子の上に膝をついてのって、窓の外をのめり込むように見ている子ども。テーブルにみかんを載せて食べようとして1個を落としてしまった髪の毛の長い大人の人、また赤い半袖の服を着て、左手をあげて「○○が見える」とでも言っている子ども。このように飛行機の中は、楽しさいっぱいです。実は、人物だけではなく頭上の荷物入れにも、予想の範囲を超えませんが、ペンギンの人形や、赤色と黄色のストライプの入れ物かお土産、赤いリュックのような鞄、ステレオのスピーカーを装備した音響装置、ウサギと魚が描かれた入れ物など、楽しそうなモノたちが持ち込まれているのです。描かれた内容も楽しい、事物を描く力量が発揮された万華鏡と言えるでしょう。

 万華鏡の仕組みに目をやると、この作品はホイールスコープ万華鏡で、先端に皿型の円盤をつけて、それを回しながら変化を楽しむようになっています。この円盤が、自作の極めて美しい円盤なのです。形状は、少し楕円に近いのですが、星や虹、鳥やロケット、パラグライダーに乗っている子どもや、雷を発する雲の上の赤鬼などが、カラフルな色で工夫して描かれているのです。プラバンに描いて定着させたと教えていただいており、一体感のある円盤となっていますが、焼成温度など難しい技法を乗り越えて製作されたと考えられます。のぞいてみると赤色や黄色、緑色や空色のポップな色味の光映像を作り出し、手で描いたユニークで質感の高い世界を楽しむことができます。まわす度に出現する形や色の織りなす世界は、飛行機にのっている人たちのわくわく感の演出ともとれますし、飛行機から見える新たな世界の発見ともとれます。高い表現力を駆使して楽しい飛行機の旅を粘り強く表現した点を高く評価して、京都万華鏡ミュージアム賞としました。

京都万華鏡
ミュージアム賞

作品名:お花畑

【のぞく時の注意点】

【工夫した点】最初に選んだ、花の紙に合わせて、オブジェクトも花畑っぽくしました。

【この万華鏡の楽しみ方】まわりに、プラ板で遊んでいる人やちょうをかいて、(焼いて)つけました。見る人がたのしめるようにつけました。

審査員講評

作品「お花畑」を京都万華鏡ミュージアム賞としました。万華鏡の半透明な筒のなかは紙の花でいっぱいなのですが、外には緑色の布を葉の形に大きく貼って、プラスチックの上に子どもたちと蝶々を描き、お花畑で遊ぶ万華鏡となりました。ピンク色の蝶は、横からみた形です。黄色の蝶は、正面からみた蝶です。紫色の蝶もいます。この野原には、カエルもいるのです。これらはプラバンを切って、焼いて完成させたと教えてくれています。光沢のあるプラスチック上の絵が存在感を際立たせています。既存のシールやビーズなどを貼った表現とは、表現の自由な有様が格別です。のぞいてみると、透明感の高いピンク色、オレンジ色、レモンイエロー色、緑色などお花畑の満開を感じる光映像が展開するのです。かなり高度な手順を踏んだ、作者の思いを託した自由な表現と質感の高さが統合した万華鏡と評価して、京都万華鏡ミュージアム賞としました。

京都万華鏡
ミュージアム賞

作品名:南の島からハッピー!!

【のぞく時の注意点】目がパイナップルの葉のとんがっているところにささらないようにしてのぞいてください。

【工夫した点】円ばんにパイナップルをかいて南の島らしくした。鏡にもビーズをはって、にぎやかにした。

【この万華鏡の楽しみ方】円ばんを2つつけたから、かた方ずつ回してもいいし、両方回したりして楽しんでください。

審査員講評

作品「南の島からハッピー!!」を京都万華鏡ミュージアム賞としました。この作品は、パイナップルのような形をした万華鏡です。黄色い台には、貝殻がちりばめられていて、あたかも海岸に今落ちたばかりのパイナップルのような気持ちがします。万華鏡の仕組みに注目すると先端は、2枚の円盤のついたホイールスコープです。円盤を回して楽しみます。これを5角形のミラーを装備して、覗かなくても楽しめる万華鏡となっています。創作意欲が高く、透明の円盤に自分で色を塗っておられます。この効果か内部の光映像は、瑞々しい表現色となり、内部にはビーズのような既存のオブジェクトも入れており、その相互作用がとても不思議な質感の色表現となっています。南の島の海岸にたたずんで、吹く風や光や波や波に運ばれてきたモノたちが持つ不思議なイメージの交錯体験を感じているような万華鏡です。ホイールの緑で塗られている部分が関わると、主調色が揺れる緑色なので、吹きガラスのステンドグラスのような質感も味わえます。様々な点にチャレンジしてどこにもない光映像を作り上げた点を高く評価して、京都万華鏡ミュージアム賞としました。

審査員特別賞

作品名:鴨川の海の万華鏡

【のぞく時の注意点】ガラス玉に指紋や、くもらないように、中に鏡のガラスが3枚入っているのでていねいにあつかうこと。

【工夫した点】鴨川の海の写真と砂浜で拾った貝殻で、鴨川のきれいな海を再現してみました。

【この万華鏡の楽しみ方】見る場所によって、模様が変わるので、毎回新しい模様を楽しめる。

審査員講評

作品「鴨川の海の万華鏡」を審査員特別賞としました。作者のコメントで特定されていたわけではないのですが、千葉県鴨川市の美しい海がモチーフの万華鏡と想像しています。外観は、鴨川の海の写真を全面的に配置し、砂の写真の上に沢山のかわいい貝殻が配置されています。万華鏡の仕組みに目を移すと、先端に球体のレンズが入っているテレイドスコープ(Teleidoscope)であることがわかります。外界の移り変わりを万華鏡内に取り込みます。内部を見ると、球体などに見える光表現は美しく、完成度の高さを感じさせます。鴨川の海を見たことのない人にも、単なる平面的な海でなく、迫力のある海岸の美しさが迫ってくるようです。海のイメージを球を基調としたイメージに凝縮した、独自な理解を進めた点を評価して審査員特別賞としました。

審査員特別賞

作品名:ゴリラ家族のお散歩

【のぞく時の注意点】大きくふらないでください。

【工夫した点】自分はバナナが大好きで他にバナナが好きな動物を考えたらゴリラが思いうかびバナナとゴリラにしました。3匹のゴリラは家族で大好きなバナナをもってお散歩しています。おかわり用のバナナを入れるためにポシェットを持っています。オイルの中にはバナナをイメージして黄色いビーズを使いました。

【この万華鏡の楽しみ方】バナナを持ってお散歩しているゴリラを見て楽しんで、中をのぞいて黄色の世界を楽しんでください。

審査員講評

作品「ゴリラ家族のお散歩」を審査員特別賞としました。表現はとてもユニークな万華鏡と捉えています。万華鏡の筒では、黄色(空)と赤色(大地)を背景として、大きなゴリラと小さなゴリラが手をつないでお散歩をしています。ゴリラの親子が、紙粘土で作者の思い通りに作りこまれた大変ユニークな万華鏡なのです。大きなゴリラはバッグ状のものを肩からかけており、黄色のピンとおはじきで表現しています。この発想も大変ユニークです。子どももバッグ状のものを持っており、レモンイエロー色のビーズと大きな四角の黄色のオブジェクトで表現されています。また、ゴリラは、手にバナナを持っているのかもしれません。お散歩は、遠足のように準備万端なのです。このように、この万華鏡のゴリラは、面白いストーリーが背景にあるようです。鑑賞者を想像と空想の世界に引き込んでいきます。万華鏡の中を見ると、黒色を背景に、緑色と黄色で綺麗な形が生み出されてきます。バナナやお野菜の断面のような形が連想されます。大変ユニークで独自な世界を表現している点を高く評価して審査員特別賞としました。

審査員特別賞

作品名:「ようこそ、サンタさん」

【のぞく時の注意点】サンタさんのぼうしを取り、えんとつをゆっくり引きぬいて、のぞいてください。家は小物入れになっているので、屋根がはずれても、こわれたのではありません。

【工夫した点】クリスマスを表現するのに、赤と緑を多く入れた点。いろいろためしていると松ぼっくりのような見え方になって冬のイメージぴったりになった。

【この万華鏡の楽しみ方】えんとつをのぞいて、サンタさんの気分を味わってください。明るく楽しいパーティーの様子が見えます。

審査員講評

作品「ようこそ、サンタさん」を審査員特別賞としました。クリスマスの万華鏡です。フェルトのような柔らかな布地で雪の積もった家が表現されています。雪は、ふわふわした丸い形と灰色のキラキラの宝石のようなオブジェクトで表現されています。黄色のドアには、赤色のノブがついています。扉の上部は、緑色の三角形で表現されています。茶色の家の色と緑色の配色で、クリスマスの森の木のような印象を持ちます。温かみを感じさせるしっかりとした表現でクリスマスの家が表現されているのです。家の煙突には、サンタさんの帽子が置かれています。サンタさんは、プレゼントをこの家にすでに持ってきたので、帽子で目印にしたのでしょうか。サンタさんは、あまりに忙しいので大切な帽子を忘れてしまったのでしょうか。帽子ののってる煙突(円筒)を引き抜くとそれが万華鏡になっています。中を見ると、細かな赤色と緑色と黄色などのオブジェクトを沢山入れて、明るく楽しい様子が表現されています。暖かくしてパーティをしているような、そこでは沢山のおしゃべりが聞こえてくるような光表現です。屋根が外れるようになっており、小物入れとして使えるようになっている設計だそうです。完成度の高い万華鏡を評価して審査員特別賞としました。

佳作

作品名:きれいな海

【のぞく時の注意点】かざりがすこしとれやすいのできをつけてのぞいてください。

【工夫した点】うみにきらきらをつけたりうみの色をすこしずつかえたりして工夫した。

【この万華鏡の楽しみ方】万華鏡をまわしたり、優しくふってから見てください。

審査員講評

作品「きれいな海」を佳作としました。紙粘土で、海の凹凸を作り、色を塗って微妙に変化を与えて完成した万華鏡です。紙粘土の凹凸は、独特の変化に富んでいます。手の中から生まれてきたというべき作品です。作者にしか作れない持ち味と言えるでしょう。

 ヒトデや巻貝など様々な貝たちの住む場所は、茶色かオレンジ色ですが、この部分から覗きます。海は、目の前に広がっています。真ん中あたりがかなり明るいセルリアンブルーで、空の色です。多くの部分が、青色です。両者に細かなオブジェクトが丹念に埋め込まれています。先端に近いところには、透明ですが細かな凹凸のある大き目のオブジェクトが埋め込まれています。この部分を一番太くしてボリューム感いっぱいにしています。プロポーションがユニークで興味を引く万華鏡です。

 先端には、透明ですっきりとした円筒状のチェンバー(容器、部屋)がついていますが、その中に綺麗なブルー系統の主調色ですが、虹色にも光る球状のオブジェクト等が入っています。このチェンバーは、万華鏡の機能として必要ということもありますが、手元からの凹凸のある青色表現の先に、すっきりした透明のある空間に球体の青色や空色を見せるという変化も与えています。既存のケースですが、全体のまとまりとしておおいに変化のある、生かされている形をしています。内部をのぞいてみると濃い目のブルー色や薄い緑色や薄い赤色・黄色といった、細かな潮騒を感じさせる光映像を見ることができます。このように海の不思議な色彩世界に迫っており、紙粘土による手作り感のある創作性の高さを評価し佳作としました。

佳作

作品名:夕方の空色くま

【のぞく時の注意点】くまのみみや足のポンポンがとれやすいので気をつけてのぞいてほしいです。

【工夫した点】真ん中の色紙の部分をのこしたかったので、上下に顔と足をつけました。くまをかわいくしたかったので、ほっぺに細いマスキングテープをつけました。

【この万華鏡の楽しみ方】

審査員講評

作品「夕方の空色くま」を佳作としました。紫色から青色・空色へ、そしてオレンジ色へと、ぼかしを生かしながら変化する紙が、とても気に入って使われています。紙素材への尊敬にも似た愛着が背景にあり、空色のくまの毛を思わせる毛糸の表現は、覗き込む側と先端部分という限られた空間に限定されて使われています。覗き込む側に熊の顔があり、白い鼻や口の部分には白いふわふわの球体、耳には、ピンク色の球体で表現されています。先端は、ぐるぐる巻かれた空色のボディとくまの足です。

 覗いてみると、くすんだ暗めの緑色と鮮やかなオレンジ色やマゼンタ色の細かなオブジェクトが選ばれています。また、くすんだ暗めの緑色のクリップで森の木々にも見える直線表現も取り入れています。高貴ともいえる深いエレガントな光表現が展開しているのです。外観との意外性がある万華鏡なのです。「夕方の空色くま」という発想は、どこからきたのだろうと教えてほしいほど面白い着想ですが、エレガントな万華鏡の光表現との組み合わせも興味深く、特徴のある発想力を評価して佳作としました。

佳作

作品名:しんぷる

【のぞく時の注意点】ゆっくりまわしてください

【工夫した点】線がみえるようにした

【この万華鏡の楽しみ方】線を楽しんでください

審査員講評

作品「しんぷる」を佳作としました。赤色と黄色のマーブリングを施した紙で万華鏡の外観を表現しています。このマーブリング紙を自分でおつくりになったと考え、紙から作ってみるチャレンジが感じられます。着色は、一瞬かもしれませんが、すぐに紙を十分に洗ったり、平滑にして乾燥したりと、かなりな手順を踏んでおられると推測します。数々の柔らかい曲線で囲まれた発色面の味わいに特色があると考えられます。

 万華鏡の中をのぞくと、直線のオブジェクトを使った、3角形やその幾何的な合成図が楽しめる万華鏡になっているのです。オブジェクト数も制限して、すっきりした線の構成が出現できるように工夫されたと考えられます。外観の曲面と内観の直線形態は、意外性のある組み合わせです。ストレートな驚きと、線の美しさを見る人に届けることに徹した考え方を高く評価して佳作としました。

主催:京都万華鏡ミュージアム