子ども万華鏡大賞

作品名:残暑に負けるな

審査員講評

 中学生部門の子ども万華鏡大賞は、作品名「残暑に負けるな」としました。京都の九条ネギがイメージされた万華鏡です。この作品は、2本の緑のネギの葉が絶妙な角度をつくっています。多くの方が、外観だけでも見事と思うことでしょう。ネギの葉っぱをこれほど楽しく作品にした例が過去にあったでしょうか。白い部分は、フェルトのような材料でつくられており、驚くほど実際の野菜を持っているかのような感じがします。

 作品では赤色のてんとう虫が羽を広げ、今にも飛ぼうとしています。ネギの緑色と対照的で、とても新鮮に感じられます。生き生きとした自然の営みが感じられ、今そこにはえていたネギが万華鏡になったようです。

 万華鏡のシステムは、ドライ系のチェンバースコープです。オブジェクトケースには、クリップや反射の強いオブジェクトが入っていて、覗いてみるとネギやニンジンやトマトを連想させるオブジェクトと、クリップの線状のイメージが織りなす図形イメージが展開されます。映像はくっきりと明快で、野菜たちの知られざる成長の毎日を万華鏡の中に見るようです。また、万華鏡を動かすと極めて軽やかに形が変わっていきます。オブジェクトの量が適量で、変化が軽やかなのです。とても素晴らしい農業フィールド・食の世界とつながりが持てる万華鏡となりました。農家の皆さんにプレゼントされるようですが、食に関わる植物の形や色に親近感を感じ、私にもプレゼントして欲しいと思う方も多いことでしょう。身近なモチーフを絶妙に捉えて、他に類例を見ない完成度に高められた本作品を高く評価して子ども万華鏡大賞としました。

京都市教育長賞

作品名:六華

審査員講評

 作品名「六華」を中学生部門の京都市教育長賞としました。この万華鏡は、雪の六角形の結晶が見える万華鏡です。雪を見たことのない暑い国の子どもたちにプレゼントしたいそうです。

 筒全体は、白いフェルトのような柔らかな材料で表現されています。万華鏡のシステムは、オブジェクトが入っている密閉された棒(ワンド)の中の流れ等を見る万華鏡です。筒と棒で構成されているのですが、本作品にはその容器に白い結晶が入っており筒と類似した白なのです。全体としては、接合部が紫をしたT字型に見える作品です。筒の外観には結晶形が配置され、万華鏡内の光イメージを予感させるデザインです。

 ワンドの中には塩化アンモニウムの結晶を析出させているそうで、そのワンド(棒)の中を落ちていく姿で雪が表現されています。オブジェクトの姿がリアルなため、本当に今雪が降るという出来事が起こっていて、その結晶を見ているような現実感があります。また、光の光沢感が高く、雪の結晶の反射を思わせます。その光世界は別世界。高度な科学的知識を存分に使った表現を高く評価して京都市教育長賞としました。

京都市教育長賞

作品名:青い花束

審査員講評

 作品名「青い花束」を中学生部門の京都市教育長賞としました。紺色の大きなリボンと同色の筒が印象的な作品です。プレゼントの希望は、「推し」とされ、自分のイチオシのアイドル、俳優、キャラクターなどにプレゼントされるのでしょうか。

 筒には、目立つ紺色の大きなリボンと、薄い青色のチューリップが3本、チェーン状の紺色と緑色の紐で表現されています。マゼンタ色の蝶々も飛んでいます。

 中を覗くと、マゼンタ色と青色と明るい線状のベージュに近い白色の世界が展開されます。タイトルの青い花束の中は、エレガントで華やかな世界だったのです。目を引きますが、シックで落ち着いた外観と対照に、内部はマゼンタ色と白色というドレッシーな色空間が表現されているのです。

 驚くことに他にない、2層の空間的な光映像も感じられます。オブジェクトケースに青色の紙を貼って、入光を線状に制限しておられるからかと推察しますが、宝石のようにキラキラと光る太めの柔らかい光の線が生じます。

 外観を手作りでしっかりと行い、内観は単なる多色やキラキラ世界ではない、色彩のドレッシーな表現を独自に追求した点を高く評価して京都市教育長賞としました。

京都万華鏡
ミュージアム賞

作品名:0時の町並み

審査員講評

 作品名「0時の町並み」を中学生部門の京都万華鏡ミュージアム賞としました。この万華鏡は、外観が黄色と紺色のコントラストの高いデザインで構成された、とても目立つ美しい万華鏡です。

 2つの大きな特徴があります。1つ目は、つくりの2重構造です。外側の透明ケースと、絵がデザインされ鏡が設置されている内側の円柱状ケースで構成されているのです。外側のケースは単なるケースではなく、最下部に5個の黄色のビー玉と、紺色の2個のビー玉を入れ、このビー玉の色や動きが、内部の円柱型の万華鏡の光の取り入れ口と連動しています。オブジェクトケースになっているのです。さらに窓ガラスのように光沢感があるので、町並みをある建物の窓から見ているような気持ちにさせてくれます。

 2つ目の内側の筒には、明るい夜の風景が表現されています。夜というと暗闇やネオンサインなど人口の光源がイメージされますが、どこまでも明るい月夜のイメージなのです。この街はビルもあるのですが、鋭角の三角屋根の塔を持つ家があります。その家には室内にも室外にも猫がいます。一匹は屋根の上で月を見ていますし、もう1匹は、室内を歩いています。

 万華鏡のシステムは、ドライ系のチェンバースコープです。ピカピカする星形のオブジェクトの層と、前述したビー玉の色彩が投影された層があり、2重の光映像となっています。

 このように、色彩構成や光の構成などで卓越していると高く評価し京都万華鏡ミュージアム賞としました。お母さんにプレゼントしたいそうですが、文学的ともいえる猫の活躍する月夜の美しい町並みをプレゼントされるお母さんをうらやましく思う鑑賞者も多いことでしょう。

京都万華鏡
ミュージアム賞

作品名:理想の海

審査員講評

 作品名「理想の海」を中学生部門の京都万華鏡ミュージアム賞としました。地球にプレゼントしたい万華鏡です。

 紺色と青色の2色の毛糸が万華鏡の周りを空間的におおっている、他にない貴重な万華鏡です。手の中に、アートの総力を挙げたパビリオンがあるかのような造形なのです。万華鏡が、建築世界にワープしてしまったような壮大感がある作品ということができます。

 この空間構造は、つまようじを筒に沢山刺すことで実現されています。これを支柱として毛糸を巻いていって、みごとな高いボリューム感を実現しました。うねった波を再現したそうです。そこにビーズや赤い毛糸をつけることで、水中のサンゴや貝殻が想像できます。赤い毛糸は、筒に貼られており、海面と海底の関係でしょうか。とても空間を感じさせます。

 万華鏡システムは、オイルタイプのセル(チェンバー)タイプの万華鏡です。オイルを大量に入れたタイプではなく、少量のオイルでオブジェクトをケースにつけているようになっています。ドライとオイルの中間的な作品です。また、透明の空色オブジェクトが大きくは3段階で入っているようで、それも数を制限しているので、海の中の水の動きを見るようです。

 手の中の万華鏡を建築規模の空間と感じさせる作品へと高めた点を高く評価して京都万華鏡ミュージアム賞としました。

審査員特別賞

作品名:Universe

審査員講評

 作品名「Universe」を中学生部門の審査員特別賞としました。頑張っている人の心をこの万華鏡で癒したいそうです。

 粘土で筒全体を宇宙につくっておられます。この万華鏡を木製のフレームに、金属製の支えがついた台を自作されて置けるようにされた作品です。木製のフレームの中心の長方形部分には、空色や紺色の小さな円柱型が沢山貼られていて、その中に星形が混在しており、3個の星だけが黄色になっています。粒立ちがそろっている均等感は、宇宙の壮大感やどこか安心感を感じさせる精度の良さが伝わってくる造形です。この台に、万華鏡を置くことになります。筒には土星や赤い星は火星でしょうか。惑星が大胆につくられています。筒の全体は、黒色に近い暗めの灰色です。宇宙空間の暗さが表現されています。 

 万華鏡システムはドライタイプのセル型です。セルに深さがあり、細かなオブジェクトを厳選して入れておられるので、とても光映像がよく変わる万華鏡となっています。オレンジ色や赤色、ブルー色など細かで均等感のある光映像から、宇宙の神秘・美しさ・雄大さが感じられます。宇宙旅行をしている気分を味わってほしいと述べられていますが、大空間に細かな物質が広がっていることが体験できる万華鏡になっています。

 独自な工夫を積み重ねてそれをまとめあげた点を高く評価して審査員特別賞としました。

審査員特別賞

作品名:青い花のブーケ

審査員講評

 作品名「青い花のブーケ」を中学生部門の審査員特別賞としました。筒の全体は、ブーケで使われる花をおおう紙の印象でしょうか。筒全体の主調色(ドミナントカラー)を、白色としています。そのため、白色の醸す、清潔感や清楚感があります。オブジェクトもパールのような白色が配置されており、しかも正方形型なのです。同一の中にも主張するこだわりが感じられます。

 この白色を背景に、淡い青色や透明感の高い空色、花の色は紺色が配色されています。リボンや花などのオブジェクトを青色系統でまとめ、主調色(基調色)が青系統のさわやかな洗練された万華鏡となっています。美しい統一感と言えるでしょう。

 中を覗いてみると、小粒の白系統や青~空色系統のオブジェクトがかわいい光イメージをつくります。小気味よく変わっていく性能の高さがあり、筒の外部表現と鏡のつくる内部表現が、素晴らしい統一感でまとめられています。万華鏡全体を一つのイメージとして見事にまとめあげた点を高く評価して審査員特別賞としました。

審査員特別賞

作品名:しょく物

審査員講評

 作品名「しょく物」を中学生部門の審査員特別賞としました。外観は、紙の紐でらせん状をつくり、そこにセンニチコウ(千日紅)のようなボンボリ型の赤い花と、いくつも小さな薄い色の花が付いている赤い花の2本の花があります。また、薄い空色の花に同じ大きさくらいの蝶がとまっている花が配置されています。さらに、小さな6つの花弁の青い花や大きな3つの花弁の花なども咲いています。さらに、グリーン色のビー玉や紺色のガラス感のあるタイルも装飾されています。

 万華鏡システムは、ドライタイプのチェンバースコープと思われます。オブジェクトケースには、透明な紺色や黄色のタイルとビーズのオブジェクトが入っています。タイルは小さなオブジェクトではなく、転がってはいきますが大き目のオブジェクトです。

 覗いてみると、他にはないしっかりした正方形を基本にした光映像が現れます。透明度の高い黄色や紺色、そして暗めの紺色の作り出す形は、花を上から見たような、驚くほど見事な対称性の世界となって表現されるのです。作者も、花のような形になるようにバランスを考えたとおっしゃっています。そしてこれが毎回、形を変えていくのですから見事としか言いようのない体験をさせてくれます。このように独創的な万華鏡を高く評価して審査員特別賞としました。

佳作

作品名:M

審査員講評

 作品名「M」を中学生部門の佳作としました。この作品は、万華鏡の両端にウミガメやサメやクジラや種々の魚たちのいる深い海を連想させる紺色の紙が配置されています。中心部分には、薄紫色を背景に貼り、空色の紙を「M」という文字を切り、前後で透けて見えるようにされています。どこかモダンな感じのする万華鏡といえるでしょう。タイトルのMという文字が、表現されているのですが、Mという文字は何に由来されているのでしょうか。なんだろうとワクワクと想像しながら味わう万華鏡です。モダンな感じという言葉の起源となった、すっきりした線や面の構成で著名な建築デザインのバウハウスデザインを連想する方もおられるかもしれません。

 オブジェクトケースには緑色のクリップが入っています。また、空色の粒が輪郭をたどるように正方形に並んだオブジェクトや、同じ形式の月形や星形のオブジェクトなど、線構成のオブジェクトが選ばれています。小さなオブジェクトとしては、キラキラした星形などのオブジェクトなども入っています。 

 万華鏡システムは、ドライタイプのチェンバースコープと思われます。覗いてみると、とても美しい「辺」を感じさせる光イメージが展開されます。線的な緑色と薄いピンク色が合成されてつくりだす光イメージは、目に飛び込んでくる素晴らしいシーンを構成しています。

 トータルで線や面を感じさせる端正な万華鏡が究明されており、その点を高く評価して佳作としました。ご自分へのプレゼントにしたいそうです。

佳作

作品名:夏の風物詩

審査員講評

 作品名「夏の風物詩」を中学生部門の佳作としました。四ツ尾の金魚のいる紙を活用し、夏の風物詩を表現した万華鏡です。赤い金魚が数匹、黒い金魚もいます。水面にモミジの葉っぱでしょうか。風で様々なものが落ちてくるからでしょうか。水面に波紋が起こっています。

 一つの波紋の中心に紺色の六角形のオブジェクトとそれよりも小さな紺色のオブジェクトが2個はられている波紋があります。そこには、白色の紐に水色の糸が巻きつけられて、円の形になった波紋があります。うねって光った水面の感じが一層伝わってきます。 

 オブジェクトケースには、カラフルな金属シートを鳥型等にしたオブジェクトや、ピンク色や薄紫色系統のクリップが入っています。また、緑色のオブジェクト、オレンジ色の筒型オブジェクト、無色の宝石型など、各種の小型オブジェクトも入っています。

 万華鏡システムは、ドライタイプのチェンバースコープと思われます。覗いてみると、クリップの効果か、三角形や六角形などの線がくっきりと端正に囲む形態に、オレンジ色や緑色や空色の形が関わる光映像が見えます。水草の生えている場所で、赤い金魚の泳ぐ水面のイメージと受け取る方や、直線イメージから金魚を守るための簾のイメージを持つ方もおられるでしょう。涼しげな金魚の風景から連想して、夏に支柱で支えたところで朝顔が咲いている風景や、浴衣着のイメージに連想を膨らませる方もおられるかもしれません。心に深い印象を残す季節の光景を取り上げ、詩作したくなるほどの美しさと情感に着目した点を高く評価して佳作としました。おばあちゃんにプレゼントしたいそうです。

佳作

作品名:小さなプレゼント

審査員講評

 作品名「小さなプレゼント」を中学生部門の佳作としました。美しい空色の万華鏡です。「糸の宝石」と言われるレース状の透かし模様が特徴で、主調色(ドミナントカラー)を空色として筒全面を繊細な模様で構成しています。

 中心より少し高い位置に、背景の空色よりも強い感じの青色のリボンをつけており、リボンの中央で明るい空色のボタンが光っています。青いリボンやレースの表現から、全体的にとても涼しげでかわいらしさを感じる作品です。背景のレースの空色からすると3段階の配色となっています。アクセントとして、白い帯状のレース文様をリボンの上下に配置し、覗き窓側に極めて薄いピンクの細い紐を配置しています。優しい統一感と少しのアクセント。まさしく、エレガントな印象を受ける万華鏡と言えるでしょう。

 万華鏡システムは、ドライタイプのチェンバースコープと思われます。無色の透明なオブジェクトと青色系のオブジェクト、マゼンタ系のオブジェクトが入っており、覗いてみると、光イメージも外観と調和したさわやかな空色の光世界が展開されます。よくまとまった完成度の高い万華鏡と高く評価し佳作としました。お母さんにプレゼントしたいそうです。

佳作

作品名:卒業証書

審査員講評

 作品名「卒業証書」を中学生部門の佳作としました。この作品は、落ち着いたマット調の黒色の筒に、とても美しく赤いリボンが結ばれた作品です。リボンは、水平位置で結ぶというよりは、かっこいい上昇を感じさせる位置に結ばれています。黒い筒には、白色で卒業証書と書かれており、万華鏡の黒色の筒は、卒業証書入れなのです。

 この筒に、折紙で丁寧におられたピンク色・赤色・青色の3本の花束(チューリップでしょうか)が添えられています。卒業式のお祝いの花束なのかもしれません。 

 万華鏡システムは、ドライタイプのチェンバースコープと思われます。覗いてみると、金色のモール(シェニール、毛虫のように毛が出ているタイプ)でしょうか。細かくキラキラと美しく輝きます。また、同系色(黄土色)の透明なオブジェクトが入っており、落ち着いた様子で輝いています。この透明なオブジェクトは光のグラデーションをつくり滑らかな印象を与えます。落ち着いた中にキラキラとした様子が見える光イメージになっています。

 さらに、紺色のモールと透明な空色オブジェクトも入っており、補色の関係なのでくっきりとしたメリハリをつけています。中を見た人が卒業後の未来は、キラキラしていると感じてほしいという願いで制作されたそうです。また、この作品を3年生になられたご自分にプレゼントしたいと思われています。

 万華鏡づくりのどの段階でも、的確でしっかりとした取り組みをして、作品全体をまとめていかれた点を高く評価して佳作としました。

主催:京都万華鏡ミュージアム