作品「雪の結晶」を京都市教育長賞としました。外観は大小の雪の結晶(対称性世界)がテーマであることを感じさせますが、覗いてみると驚くほどの明暗美の万華鏡なのです。大きなポイントは、オブジェクトが固体ではなく、液体(固体ではなく、一部気体の可能性もある)だということです。コロコロとした変化のないオブジェクトではなく、様々な局面が生まれる万華鏡なのです。そこは、美しさとしては歴史的な聖堂の天井(画)を見るようなのですが、手を少し動かす度に違った形に変わっていく様子は、既存の文化財では説明ができない世界なのです。まさしく液面同士のつくる驚愕の神秘体験の世界がこの万華鏡なのです。
筒の外観も美しく仕上がっています。まず、ベースに大きな雪の結晶の印刷された紙が貼られています。その上に小さな雪の結晶がどんどん貼られ、雪の降る世界の遠近感が感じられるようにされています。一見綺麗な雪の結晶の紙だなと思われますが、作り込まれた表現なのです。
中を覗いてみると、色味の全くない無限の明度の世界がそこにはあります。驚くべき美しさで見る人は息をのむことでしょう。固体ではないオブジェクトという発想の転換がいかに大きなことであるか。液面同士は、ぷるんとした丸餅状態の境界面を作っています。この局面がゆらゆらと無音で常に動き、局面的な形を変化させていくのです。液面では光が反射するので、キラキラとまばゆい体験も同時に起こっています。この仕組みが2層になっている可能性もありますが、外観からは特定できなかったので大きな方向性を述べるにとどめます。
このように、すぐれた材料に着目し、それを一貫した美の世界に統一した成果はかなり高く、京都市教育長賞としました。