はじめに
子ども万華鏡大賞のねらい
万華鏡づくりや鑑賞は、光の世界にかかわる楽しい体験です。
子ども万華鏡大賞公募展は、想像の赴くままに自由に万華鏡を制作する事で、子どもの心がより豊かにより健やかに成長できることを希望して開催されています。カウンセリング(箱庭療法)やユング心理学で著名な河合隼雄氏が、万華鏡が心の改善に有効と着目され京都万華鏡ミュージアムを提案されました。この公募展は、その考え方に沿って人の心(創造力)に夢を持つ実践の一端となります。
本年で12回となり、総数127作品が応募されました。前回11回が115作品で、立体作品の公募展としてはかなり多く感じられましたが、今回はさらに1.1倍の応募でした。10年前の2015年では、21作品(7県)でしたので、増加傾向にあります。万華鏡の生み出す光世界に次第に注目がえられ、多くの方の参加をいただいたことに審査員の立場ですが、心よりお喜び申し上げます。
子どもが自らの創造活動に注目する点を広めていくことが本旨ですが、大人の万華鏡が、光装置としての工芸的な側面が強いところに対して、子どもの万華鏡の世界は、大人の概念に縛られず、応募者一人ひとりがこのような万華鏡にしたいという創作意欲に溢れ、ファインアート(絵画、彫刻など)的な存在感のある作品として取り組まれる傾向にあります。本年はその傾向がかなり強く、他に見ることのできない貴重な展覧会となっています。展示期間は、2024年11月12日(火)~11月17日(日)(場所:京都万華鏡ミュージアム 姉小路館アートギャラリー)で、入場無料で見ることができます(他の展示は有料)。是非直接作品を手に取ってお楽しみ頂ければと存じます。
実施方法
1.主催及び共催
本公募展は、主催が特定非営利活動法人京都万華鏡こう房・京都万華鏡ミュージアムです。
京都市教育委員会が共催されています。
2.募集期間
第 12回子ども万華鏡大賞の募集期間は、2024年7月17日(水)~9月16日(月)でした。
応募条件は、次の通りです。
① 応募資格:3才以上の幼児・小学生・中学生であること。
② 出品点数等:一人2点までです。なお、出品料は無料です。
③ 作品規格としては、
1.未発表の完成した作品に限る。
2.応募作品は高さ35㎝ 幅35㎝ 奥行35㎝以内の箱に入れて送付することとされます。
これが大きさの上限です。
3.展示に複雑な組み立てを要する作品、また、生ものなど腐ったり不快感を与える物は不可です。
④ 応募作品には、必ず1作品に1枚エントリーシート又は、リーフレット裏面を貼付すること、とされています。
なお、全国どの県からも無料で応募できます。
3.募集結果
表1 部門ごとの応募者数と作品数
108人、115作品の応募がありました。2作品の応募を可能としているため作品数が多くなっています。各部門ごとの応募者数と作品数をまとめた表が、表1です。幼児は、8人であり全体の7.4%でした。小学生は、合計43人の応募で全体の39.8%でした。中学生は、57人であり、全体の52.8%でした。
応募者の地域別では、1都2府4県からの応募がありました。それを表にしたのが、表2です。美術館のある京都以外からも、多数のご参加をいただいています。ご応募をいただいていない県でも、自分自身の万華鏡をつくる面白さに興味をお持ちいただく潜在的な可能性はかなりあり、今後の課題としていく必要がありそうです。
審査方法
1.審査員
2.審査日程と審査場所
審査は、2024年10月9日(水)に京都万華鏡ミュージアム館内併設のアートギャラリーで行いました。
3.審査手順
審査は、受賞区分として発達段階の観点から4段階の部門(幼児部門、小学生低学年部門、小学生高学年部門、中学生部門)とし、部門ごとに審査を行いました。第一次段階で、投票制によって受賞該当者の全体傾向を掴み、第2段階で得票結果を視野に入れながら合議制で受賞者を決定しました。
具体的には、子ども万華鏡大賞、京都市教育長賞、京都万華鏡ミュージアム賞等とされており、複数の賞があるため、各審査員ごとに複数の票を持ち、一同に並べてある作品に投票し、得票数の多い作品を抽出しました。対象となる作品について、4つの立場の審査員が作品を一点一点確認しながら合議で賞を決定しました。例えば、ある作品が満票を獲得した場合でも、個々の審査員の順位としては最下位の位置づけの評価で満票とった場合も考えられます。一票少なくても、全ての審査員が1位にランキングした作品があるかもしれないからです。投票で大きな傾向性をつかみ、時間をかけて妥当性を吟味して審査結果としました。また、投票までに全作品をみて、かなり質の高い作品が多いため、審査員特別賞、佳作を設定することとしました。
4.審査結果
応募者総数は、124人でした。1人2作品の応募を可能としているので、作品総数は127作品でした。表1が、部門別の応募者数と受賞者数の集計結果です。
表2は、部門別、賞別の集計結果です。作品総数127点のうち、子ども万華鏡大賞・京都市教育長賞・京都万華鏡ミュージアム賞の3賞の受賞合計数が14作品であり、総作品数の11%の受賞となりました。各賞1人の受賞とすると3賞4部門ですので、12人の受賞となります。9.45%程度を目指していましたが、優劣付けがたい同列の高いクオリティの作品が多かった結果でした。そこで、審査員特別賞(9作品)、佳作(16作品)を増やし、合計25作品を受賞としました。
そのため最終的には、応募者の29.8%の方を受賞といたしました(表1)。また、受賞とはならなかった作品でもかなりな作品と受けとめられ、全員にフィードバックする方法を打ち出す方法の必要性があると捉えています。
応募都道府県別にみた応募者数の集計結果が表3です。図1は、県名が入っているところが、応募者のあった県です。幅広く応募いただいている実態がみてとれます。
表1部門ごとの応募者数と
受賞者数の集計結果
受賞者数の集計結果
表2 部門ごと、賞ごとの集計結果
表1 部門別の受賞者数
5.会期および授賞式
(1)展示期間
展示期間は、2024年11月12日(火)~11月17日(日)午前10時~午後6時(最終入館 午後5時30分)です。
(2)展示場所
展示場所は、京都万華鏡ミュージアム姉小路館アートギャラリーです。子ども万華鏡大賞公募展のみ無料です。京都市営地下鉄が便利です。烏丸御池駅は、烏丸線と東西線の2路線が乗り入れている両路線の乗換駅であり利便性のよい場所で、ミュージアムのごく近辺です。ですので、公共の交通機関をご利用ください。京都万華鏡ミュージアムには、駐車場はありません。お車の場合、近隣の有料駐車場のご利用となります。
(3)授賞式
授賞式は、日時 2024年11月10日(日)午前11時~です。
(4)場所及び会場
場所及び会場は、京都万華鏡ミュージアムです。
6.本年の傾向性
子どもは、単に仕組みを学ぶだけではなく、自ら万華鏡をつくったり描いたりする行為が楽しまれるようになってきました。子どもにとって万華鏡が創造のチャンスに捉えられていると思われます。万華鏡に色を塗る場合も、画家のように丁寧で、表情に溢れた表現へと向かっています。一筆一筆が大切な表現の機会なのです。
万華鏡の主題性としては、冒険がテーマとなったり、ワニの自動車万華鏡、万華鏡ジンベイザメなど、面白い捉え方をする事例が増えてきています。大人は、希望してもできにくいのではないでしょうか。
オブジェクトも既存の固体オブジェクトから、液体オブジェクトへと驚異的な表現へと興味が進んできています。また、宝石箱のモチーフの場合、万華鏡は、宝石よりも万華鏡の光映像が美しいことを発見しています。
子ども達の成長の近くにいる喜びは格別です。保護者の皆様や関係の各位の皆様とともに、子ども達を応援する活動に取り組んでまいりたいと存じます。
最後になりましたが、本展覧会の実施にあたっては、京都万華鏡ミュージアムの職員の皆様に並々ならないご努力をたまわっています。この場を借りまして心より御礼申し上げます。
子どもは、単に仕組みを学ぶだけではなく、自ら万華鏡をつくったり描いたりする行為が楽しまれるようになってきました。子どもにとって万華鏡が創造のチャンスに捉えられていると思われます。万華鏡に色を塗る場合も、画家のように丁寧で、表情に溢れた表現へと向かっています。一筆一筆が大切な表現の機会なのです。
万華鏡の主題性としては、冒険がテーマとなったり、ワニの自動車万華鏡、万華鏡ジンベイザメなど、面白い捉え方をする事例が増えてきています。大人は、希望してもできにくいのではないでしょうか。
オブジェクトも既存の固体オブジェクトから、液体オブジェクトへと驚異的な表現へと興味が進んできています。また、宝石箱のモチーフの場合、万華鏡は、宝石よりも万華鏡の光映像が美しいことを発見しています。
子ども達の成長の近くにいる喜びは格別です。保護者の皆様や関係の各位の皆様とともに、子ども達を応援する活動に取り組んでまいりたいと存じます。
最後になりましたが、本展覧会の実施にあたっては、京都万華鏡ミュージアムの職員の皆様に並々ならないご努力をたまわっています。この場を借りまして心より御礼申し上げます。
参考 村田利裕 審査委員長 子ども万華鏡大賞公募展実行委員長
京都教育大学名誉教授、まち美術館館長、アートコミュニケーション京都代表。
専門:美術教育、子どもの感性の成長・発達と指導法の分析
鎌倉生まれ、京都育ち、広島大学大学院修了。京都府立高等学校教諭、長崎大学講師・助教授、鳴門教育大学助教授、大学院指導、京都教育大学准教授、教授 /2023年から京都教育大学名誉教授 子どもと障害児・者のための美術館「まち美術館」館長
日本教育心理学会会員、大学美術教育学会会員、日本美術教育学会会員など /著書:「アート教育を学ぶ人のために」(世界思想社)、「造形コース」(日本色研事業株式会社)、「やわらかな感性を育む 図画工作科教育の指導と学び-アートの体験による子どもの感性の成長・発達-」(ミネルヴァ書房)など多数