はじめに
子ども万華鏡大賞のねらい
万華鏡づくりは、作品の造形と光の世界をひとつに結び付ける体験です。覗くまでのわくわく感と、覗いてからのわくわく感をひとつにしていくという楽しい世界です。それはあたかも、テーマ館やアミューズメントパークを自分でつくるような体験なのです。今回初めて「プレゼント」というテーマが設定されました。プレゼントと言われて子どもたちは、どんなことを想像するでしょうか。万華鏡を通して何がプレゼントされるでしょうか。
子ども万華鏡大賞公募展は、自由に、想像の赴くままに万華鏡を制作する事で子ども達の心がより豊かに、より健やかに成長できることを目的として開催されています。
主催する京都万華鏡ミュージアムは、臨床心理学で著名な河合隼雄氏(1928-2007)が、万華鏡が心を自由にし、心の改善に有効と着目され創設を提案され実現しました。この公募展は、その考え方に沿って人の心(一人ひとりの感じ方、創造力)の育成を重視して実施されています。ものづくりの時間は先生に習うだけでなく、万華鏡の事例の体験や材料たちが子どもたちの目の前にいて、「あなただったら、どんな万華鏡にしたい?」とゆっくりと聞いてくれます。「こうしたらよいのではないか」「こうしてみよう!」などと「本人が自分で答えを見つける」大切な機会となります。
本年は13回となり、総数110作品(8県)が応募されました。応募総数としては、2024年127作品、2023年が115作品で、立体作品の公募展としては100作品を超える段階になってきています。昨年も指摘しましたが、10年前の2015年では21作品(7県)でしたので、約5倍ほどご参加いただくようになりました。応援いただいている保護者様やご指導いただいている先生方、ならびにスタッフの方々の並々ならぬ活動なしにはできないことと痛感しています。この場を借りまして、厚く感謝申し上げます。
応募の特色としては、中学生部門で75作品(昨年65作品)を応募していただきました。数の増加だけでなく作品の質的な側面でもどれもが素晴らしい取り組みでした。部門ごとに賞を出しているので、コンクールという点では中学生部門が激しい展開となりました。
応募作品は全作品展示されます。展示期間は、2025年11月11日(火)~11月16日(日)(場所:京都万華鏡ミュージアム 姉小路館アートギャラリー)で、入場無料で見ることができます。是非直接作品を手に取ってお楽しみ頂ければと存じます。
実施方法
1.主催及び共催
本公募展は、主催が特定非営利活動法人京都万華鏡こう房・京都万華鏡ミュージアムです。
京都市教育委員会が共催されています。
2.募集期間
第 13回子ども万華鏡大賞の募集期間は、2025年7月16日(水)~ 2025年9月15日(月.祝)でした。
応募方法、応募資格、出品点数、テーマ等は、下記の通りです。
① 応募資格 応募資格は、3才以上の幼児・小学生・中学生です。
② 出品点数等 一人1点までとし、出品料は無料です
③ 作品のテーマ 「プレゼント」
本年はじめてテーマ設定が行われました。楽しく制作をするというだけでなく、作り上げる目的を具体的に考えることで、背景にあるエピソードやストーリーを万華鏡に詰める事が出来るのではないかと考え、テーマ設定を試みています。 なお、テーマに沿わなくても応募は可能です。
応募規格は、次の通りです。
① 未発表の完成した作品に限ります。
② 応募作品は高さ35㎝ 幅35㎝ 奥行35㎝以内の箱に入ること。大きさは、これを超えることはできません。
③ 展示に複雑な組み立てを要する作品、また、生ものなど腐ったり、不快感を与える物は不可です。
④ 応募作品には、必ず1作品に1枚エントリーシート又は、リーフレット裏面を貼付する必要があります。
3.募集結果
応募総数は、110作品の応募がありました。年齢的な発達段階で4つの部門(幼児部門、小学生低学年部門、小学生高学年部門、中学生部門)とし、各部門ごとの応募者数の集計結果が、表1です。この部門ごとに審査をし、賞を決定します。応募数の多いほうから見ると、中学生部門が75作品(68.2%)、小学生高学年部門17作品(15.5%)、小学生低学年部門10人(9.1%)、幼児部門8作品(7.3%)でした。都道府県別にみると、1都2府5県からの応募がありました。これを表にしたのが、表2です。美術館のある京都以外からも、多数のご参加をいただきました
表1. 部門ごとの応募者数と受賞者数の集計表
表2. 都道府県別の部門ごとの応募者数の集計表
審査方法
1.審査員
審査委員は、公平かつ妥当な審査結果を目指して、4つの立場から選出しています。審査員選出の方針としては、一方向からの偏った作品の見方をなくし、多角的な立場から作品を評価できるように、4つの立場から審査委員を選出しています。①万華鏡の専門性の立場から万華鏡作家(1人)、②教育の立場から京都市教育委員会(2人)、③開催者の立場から京都万華鏡ミュージアム(4人)、④創造教育の有識者の立場から村田利裕(1人、京都教育大学名誉教授)、合計8人で実施しました。
2.審査日程と審査場所
審査は、2025年10月9日(木)に京都万華鏡ミュージアム館内併設のアートギャラリーで行いました。
3.審査手順
テーマ「プレゼント」を念頭に審査は、部門ごとに行いました。第一段階で、投票制によって受賞該当者の全体傾向を掴み、第2段階で得票結果を視野に入れながら合議制で受賞者を決定しました。
4.審査結果
子ども万華鏡大賞・京都市教育長賞・京都万華鏡ミュージアム賞の3賞の合計数を14作品(12.7%)として選出しました。中学生部門は、同等に高度な表現と認める作品が存在していたので、他の部門よりも多くなりました。それに加えて、審査員特別賞6点、佳作12作品とし、総数32作品(29.1%)を受賞としました。応募総数からみると3割程度の方が受賞となっています。審査結果を示したのが表3です。
また、中学生部門では最も応募者が多く、さらにすぐれた作品が多い傾向でした。賞の数には制限があるので、作品の良さを認めていたにもかかわらず、選外となった応募作品に「子ども万華鏡大賞公募展審査委員会メッセージカード」を新設し、「あなたの作品は審査の過程で、すぐれた点があると評価されていました。謹んでお知らせいたします。」として、お伝えすることとしました。次に各部門の大賞の方の作品を例に取り上げて、応募作品の魅力の一端に触れてみたいと思います。
表3. 部門ごとの審査結果集計表
幼児部門の作品「わたしの「かわいい」はね」は、プレゼントというテーマに対して、「私の可愛いを君にあげるよ」という思いで作られました。筒はラッピングする発想でつくり、ラッピングをあける気持ちで筒をのぞくと、プレゼントを開けるときのわくわく感が楽しめ、オイルタイプの万華鏡なので、ビーズやスパンコールがゆっくりとそしてキラキラと美しく展開していきます。わくわくするプレゼント体験の万華鏡なのです。
小学生低学年部門の作品「お友だちにキラキラした海の世界をプレゼント」は、3方向から同時に覗ける万華鏡です。万華鏡は、密かに一人で楽しむと思われていましたが、3人が同時に見たらどうだろうという画期的な提案をしていただきました。筒を金色にして、望遠鏡のように伸びる機構ともしています。
3人が、つながる楽しさを引き出す画期的な万華鏡と言えるでしょう。
小学生高学年部門の作品「春のまんげきょう」では、赤色や白色、青色などの春の花々が表現されています。特徴的なのは、かわいい小さな葉っぱが、どんどん伸びて育っているのです。春の景色をプレゼントしたい。この思いが万華鏡になっているのです。中をのぞくと、さわやかなイメージが体験できます。春風と花々がダイナミックに詩にうたわれるように感じられる素晴らしい作品となりました。
中学生部門の作品「残暑に負けるな」は、京都の九条ネギがイメージされた万華鏡です。ネギの葉っぱをこれほど楽しく作品にした例が過去にあったでしょうか。2本の緑のネギの葉が絶妙な角度をつくっています。外観だけでもお見事と思ってしまいます。赤色のてんとう虫も、ネギの緑色と対照で、自然の営みが感じられ、生き生きと表現されています。
覗いてみると、ニンジンやトマトなどを連想させるオブジェクトが展開します。とても素晴らしい農業フィールド・食の世界とつながりが持てる万華鏡となりました。他にはない、誰もつくれたことのない、しかし身近なイメージが、万華鏡となっています。
5.会期および授賞式
本美術展の展示期間と展示場所は、下記の通りです。
(1)展示期間
2025年11月11日(火)~11月16日(日)
午前10時~午後6時(最終入館 午後5時30分) ※最終日は16時まで
(2)展示場所
展示場所は、京都万華鏡ミュージアム姉小路館アートギャラリー(〒604-8184 京都市中京区姉小路通東洞院東入曇華院前町706-3)です。子ども万華鏡大賞公募展のみ無料です。京都市営地下鉄が便利です。烏丸御池駅は、烏丸線と東西線の2路線が乗り入れている両路線の乗換駅であり利便性のよい場所で、ミュージアムのごく近辺です。ですので、公共の交通機関をご利用ください。京都万華鏡ミュージアムには、駐車場はありません。お車の場合、近隣の有料駐車場のご利用となります。
(3)授賞式
授賞式は、2025年11月9日(日)午前11時からです。
(4)場所及び会場
場所及び会場は、京都万華鏡ミュージアムです。
6.まとめにかえて
他に見ることのできない素晴らしい作品の展覧会となっています。会期が決して長いとは言えないところがあります。万障お繰り合わせの上ご鑑賞いただければと存じます。
参考 村田利裕 子ども万華鏡大賞公募展実行委員長、審査委員長
専門:美術教育、子どもの感性の成長・発達と指導法の分析
略歴:鎌倉生まれ、京都育ち。広島大学大学院修了。京都府立八幡高等学校教諭、長崎大学講師・助教授、鳴門教育大学助教授・合大学院指導、京都教育大学助教授(准教授へ移行)・大学院〇合指導資格、教授、2023年から現在:京都教育大学名誉教授、京町家 まち美術館 館長(子どもと障がい者アートの非営利美術館創設)