幼児の部門の子ども万華鏡大賞は、作品「セブ島の海へ、レッツゴー!」(幼稚園5歳)としました。この作品は、タコをはじめとする5匹の元気な海の動物達が目を引く万華鏡です。紙粘土を使って作者は5匹分、自分で作っています。天使の羽根にもみえるまたコウモリのような形で、何かなと思って興味を引きますが、クリオネだそうで家族を表現したそうです。これらの動物たちは大きめに作られていて、万華鏡の筒(筐体)からはみ出そうとしています。大人の万華鏡は、内部の光展開が重視され、何か表現があっても筒にプラスされる仕掛けや造形となります。一方、子どもの万華鏡は、大人の万華鏡の壁を軽々と越えていき、作品イメージが筒の外部へどんどん広がっていくのです。子どもは、万華鏡の仕組みを学んでいるだけではなく、自分の工夫を盛り込んでいっているのです。この作品からは、このことを強く感じます。
外筒(筐体)が水中(海など)を感じさせます。大きな水族館をイメージしているそうです。セルリアンブルー色と白色の紙粘土を練り込んでマーブルにして、キラキラ光る水(海)の世界をつくっています。フィリピンには、「セブオーシャンパーク(Cebu Ocean Park)」など巨大な水族館があるそうです。万華鏡作りのイメージに海外体験があるという面白さがこの万華鏡にはあります。
海の水の青さを感じる筒(筐体)に、青の補色である黄色からオレンジ色の色にして、目に飛び込んでくる新鮮さが感じられます。タコもオレンジ色にしていますが、茹であがった赤い色のタコではなく、海の色との補色の関係で着色されています。黄色の動物は、クリオネの家族だそうですが、海に生きる動物たちがとても新鮮にまた海の水の透明感を持って豊かに感じられる作品となっています。
実は、5匹にものぼるので、重い万華鏡かなと思って心配して持ってみると、なんと軽いのです。とても軽い紙粘土が選ばれていて、自分の思いを託して思う存分表現され、さらに万華鏡を回すことができるのです。覗いてみると、どんどん変わっていく水の中の色世界が展開されます。オブジェクトとしては、海の中で見たカラフルな熱帯魚や無人島でみつけた貝やカニ、初めてシュノーケルに挑戦した自分が入っています。思い出がセルに入ったとても楽しい万華鏡なのです。
覗いたイメージとしては、3枚の鏡の先端部分に近いところに透明な青色で線を引くことで、透明感の高い青色の正三角形が沢山現れています。その中に思い出でもある海のオブジェクト達が登場することになります。水の中を思わせる透明感が演出されています。
積極的な生活体験をそのままで終わらせずに、万華鏡という表現に託しておく試みは画期的で、素晴らしい作品となりました。ここまでみてきた諸点を高く評価し子ども万華鏡大賞としました。